鈴蘭日記

自閉症で重度知的障がい者の息子のお話です。

よろしくお願いします。

頑張れお兄ちゃん。

さて、今日は全国中学生人権作文コンテスト県大会で最優秀賞に輝いた中学生の作文を載せたいと思います。





   頑張れお兄ちゃん

ぼくの兄は自閉症というしょうがいを持っています。

知能や言語の遅れ、強いこだわりがあり、小さな子供のようです。

でも兄は努力家で、文字を覚えることや家のお手伝いなどを頑張っています。

兄は小学校低学年のときに、同じクラスの子の親から「こんな子が同じクラスにいるのはおかしい。普通じゃない。」と言われ、母は悩み兄を特殊級に移しました。

ぼくは、「普通って何?」、「どうしてお兄ちゃんは、みんなと一緒にいたらいけないの?」と、疑問に思いました。

今は、兄は養護学校の高等部2年生です。

高等部に上がるときに自力通学を始めました。

会話がほとんどできない兄にとっては大きな挑戦です。

ぼくも時々、途中の駅まで同じ電車に乗ることがあります。

兄はいつも同じ場所に立って、よく童謡を歌っています。

少し恥ずかしくなり、ぼくはいつも少し離れた所に立ってしまいます。

母に話すと「歌を歌っているのなら機嫌のいい証拠。良かった。」と笑うだけです。

僕は慰めてくれると思っていたので愕然としました。

時々、母の友だちから兄の電車の様子を知らせる連絡が入ってくるそうです。

問題があるときは母が一緒に電車に乗って、一つ一つ兄に教えています。

ぼくは人から連絡が入ることを疑問に思っていましたが「それはね。お兄ちゃんの小学生のときの同級生が、いつも心配して見守ってくれているんだよ。お兄ちゃんは地域のみんなから支えられているんだよ。」と母から聞かされました。

ぼくはそれを聞いてうれしさとともに、離れて見ていた自分が恥ずかしくなってきました。

また、定期券が切れて普通の乗車券で乗ったとき、兄は乗車券を運転手さんに渡していませんでした。

母が慌てて電話すると、その運転手さんは「いいんですよ。乗車券を持っているのはしっかり確認したので、わざと声をかけなかったんですよ。」と話してくれたそうです。

兄はいつも運転手さんの近くの決まった場所に乗っていたので、運転手さんは覚えていて気を遣ってくれていたのです。

社会の人々がこの運転手さんのように、優しい心と目を向けてくれるだけで、しょうがい者はもっと生活しやすくなると思います。

兄の学校では将来に向けて高2・高3ともに春と秋に就業体験があります。

初めての体験は、ある作業所へ1週間働きに行きました。

兄はさぼることを知らないので、どの仕事にも全力投球で取り組んで、職員の人からも「この子の体力と持久力にはとても驚かされました。」と褒められたそうです。

ぼくは何事にも一生懸命に努力する兄を誇りに思います。

これだけ仕事ができる兄でも、今の社会の現実からなかなか就職口はありません。

兄の将来への不安ばかりが最近の母から聞かされます。

なぜしょうがいのある人は、なかなか就職できないのでしょうか。

なぜしょうがい者を受け入れてくれないところが多いのでしょうか。

そこにはやはり、しょうがい者に対する偏見があると思います。

せめて就業体験だけでもさせてもらえば、きっと企業の人もしょうがい者に対するイメージが変わってくると思います。

社会の人はしょうがい者の悪いところばかり見て、いいところは知らないことが多いと思います。

しょうがいを持っているということは、純粋な心を持っているということです。

純粋な心を持ち、文句ひとつ言わずに仕事に取り組むということは普通の人には、なかなかできないことだと思います。

しょうがい者への偏見がなくなり、普通に健常者と同じように扱われるようになれば、働ける場所が増えると思います。

兄のようなしょうがい者が働ける場所がもっと増えて、安心して生きていける世の中になってほしいと心から願っています。

兄が笑うとぼくの心はほっと幸せな気持ちになります。

ぼくは明るいきれいな心の兄が大好きです。

「頑張れお兄ちゃん。これからも、ぼくはいつもそばで応援しているよ。」





いかがでしたか?

健気な中学生の訴えに対して、私たち大人とは何て無力なのでしょう。

彼も、そしてお兄ちゃんも苦悩する社会を私たちは作ってしまいました。

大人の責任は重いです。

この文章をしっかりと噛み締めて、子供たちのために努力していきませんか?

彼らが大人になる前に、少しでも良い社会を作り出していきましょう。